第3章 くじら
ー穂波sideー
『うん、そうだね。あのときあんなにはっとしたのに。
やっぱりまだまだ未熟だな』
「そりゃそうでしょ。おれらまだ17歳だし」
『…それもそっか …ふふ』
はぁ、幸せだな。
起きたことをちゃんと見つめて、
話して、それでこうして一緒にいられるって。
「ねぇ、穂波」
『ん?』
「なんでおれが愛想尽かすって思ったの?」
『あ、それはね…』
「………」
『研磨くんの声にイライラがなかったから』
「…?」
『もう、イライラもしなくなっちゃったかなって、思った』
「…そっか。確かにイライラはしなかったかも。
赤葦から先に聞いてたし、それに赤葦にイライラぶつけたから」
『え?』
「あ、穂波へのイライラじゃないよ。
本当におれと赤葦の間で起きたやりとりに対するイライラ」
『…へ、へぇー』
えっ…ちょっとそれ、もっと聞きたい、もっと知りたいって思っちゃう。
彼女としてとかじゃなくてもう単純に普通に、
研磨くんを好きで仕方がない一人のひととして。
「でも、おれが言ったこと覚えてる?」
『…ん?』
「おれ、許してないから」
『あ…』
「だから、今度、めちゃくちゃにする、穂波のこと」
『…や……』
「やだって言ってもする。
かわいいとこいやらしいとこ、いっぱい見て、おれのってするから」
『研磨くん……///』
そんなことそんな飄々と、淡々と、言わないで。
言葉だけで身体が熱くなる。
子宮がきゅってする。
欲しく、なっちゃう。
「…それとも、今して欲しい?」
『ひぁっ……』
耳元でふって息がかかるように聞いてくる研磨くんは。
やっぱり、研磨くんは。
ずるい。