第12章 Hi!
ー穂波sideー
自分でも変だと思う。
というか、おかしすぎて、余計に意味がわからない。
研磨くんはいてくれるだけで安心するし、今もそれは変わらない。
キスなんてもう… もう… いつもいつもそれだけですごいし、
心も身体も、いつも通りにすごく喜んでる。
なのになぜか、怖いのだ。
その、先が。
セックスするということが、なぜか、怖い。
ドキドキしてどうにかなってしまいそうだからなのか、
未知じゃないのに未知の世界みたいな。
説明すればするほど、
考えようとすればするほど、
甚だ意味がわからない。
そんなわたしをいつもの、あの冷静な眼でじっと見つめて、
研磨くんは ふっ と顔を小さく綻ばせた。
「…じゃあ、ちょうだい。穂波の初めて。おれだけに」
『初めて…』
「ん、いつも新しいし、いつも全部違うけど…… 今日は特別。
穂波の初めて、ちょうだい?」
『ん、これは…夢?』
わたしの戯言に研磨くんが寄り添ってくれてる。
それは、いつものことではあるけど、でもこんな風に乗ってくれるなんて。
でも、一度きりしかない 初めて を研磨くんに貰ってもらえるなんて。
…初めてなんかじゃないのに、ほんと意味わからないけど。嬉しい。
「自己暗示でも、催眠術でも戯言でもなんでも良い。
穂波の初めてを奪えるのは嬉しい」
『奪う… 奪われるの?』
「ん、奪われるんだよ、今、これから、おれに」
『………』
「それを、待ってたんでしょ? 電気消そうか迷いながら」
奪うなんて激し目なワードと、
研磨くんに抱く安心感と。
今のよくわからないわたしの状況と。
それだけでもう、キャパオーバーなのに
そこに、わざとだろう、待ってたっていう言葉を、
思い出させるように使う研磨くんはやっぱりずるいと思った。