第12章 Hi!
ー研磨sideー
明らかに、ちょっと挙動不審気味になってて、
おもしろいしかわいい。
挙動不審でもうるさくないのは、やっぱ穂波だなって。
あごをくいっとしてこちらを見上げさせると、
キスをすると思ったんだろうな、
目を瞑って唇を柔らかくそこに、待機してる。
でもどこか、やっぱ、なんだろ、緊張してて新鮮。
目を瞑るのに少し力が入ってる感じ。
こんなことってないから、やっぱ、この状況最大限に利用したいってなっちゃうよね。
『……?』
「………」
目をうっすら開けて、あれ?ってなってて。
おれが顔をじっと近づけていくと、次はそっと、いつも通りに目を閉じた。
柔らかく、ふわっと。
唇に触れる。
さっき、隣の部屋では普通にもっとキスしてたのに。
なんだこの初々しさ。
触れるだけのキスをして、そっと離れると、
ほわほわの顔をしてゆっくりと瞼を開く穂波がそこにいて。
初めてキスをしたあの日から。
初めて繋がった、あの時から何一つ変わらないような。
そんな錯覚が起きた。
実際穂波から香る匂いは変わらなかったり…
変わらないものはいっぱいあるけど、そういうことじゃなくてなんか。
「おれ…」
『わたし…』
研磨くんのことがすき。
って聞こえた気がした。
別にあの、教室でだけじゃない、何度もその言葉は穂波の口から聞いてて。
そして何回言われても褪せないのは本当で。
馴れ合いや惰性で言ってるんじゃなくて、穂波の言葉はいつも心が伴ってるのがわかるから。
でもやっぱ、あの、教室での時間は。
あの、キスは。
その、言葉は。
その時感じた、感情は。
こころの中の特別なとこにしまってある感じがある。
それってすごいふわっとしててよくわかんないし、うまく言えないけど。