第12章 Hi!
ー穂波sideー
あの日のこと、みんなのことを
順番に思い出していたら、そのまま律儀に思い出してしまった。
研磨くんと、身体を重ねたその夜のこと。
──『待ってて、って言われても……』
そんなシチュエーション初めてで、妙にどきどきしてしまう。
研磨くんは別に何かを期待したり、そういうわけで言ったんじゃない。
ただ、流れで、本当に自然に出てきた言葉だった。
なのにわたしは、ひとりどぎまぎしてる。
待ってて、て何を?
研磨くんが来るのを。
研磨くんが来るのをなんで待ってるの?
研磨くんもわたしも、お互いが欲しいから。
我慢できないくらい、欲しくなっちゃったから。
だから、研磨くんが来たら、何をするの?
え、わたしはそれを待ってればいいの?
でもどうやって、え、どうやって?
ベッドに浅く腰掛けて、立ち上がって、また腰掛けて。
キャンドルに火をつけようかな、って意味もなく思って、
でも待ってるって思い出した途端、その行為がすごくキザなことに思えて。
間接照明をもう一つつけてみて、キャンドルに比べて明るいなぁ… 消そうかな、なんてしている内に、
研磨くんが部屋にやってきた。
「…ふ 消さなくていいよ」
『ひゃっ 研磨くん、びっくりした』
「ふは… 驚きすぎ、めずらしいね」
『………』
「………」
『…やっぱ消そうかな』
「…消さなくていい」
『………』
「…どうしたの?」
驚いたのと、
なんだろう、その前からおかしかったのもある。
一緒にキスだとかしながら昂っていってベッドへ辿りつくわけでも、
寝るつもりだったのに触れてる内に欲しくなってしまうわけでもなく、
待ってる、っていうことを提示された時から、
変なドキドキが止まらなかった。
それが今はもっと、すごい。
もうすぐそこに、待っていたものが訪れるんだみたいな、なんだかよくわからないけど……
「かわいい。予定狂うな……」
そう小さな声で呟くと研磨くんはわたしのあごに手を添えてくいっとして、
キス……