第12章 Hi!
『…お願いは今じゃなきゃダメ?』
後にして、もうそれどころじゃないのと言わんばかりにエロい顔して、そう、聞いてきた。
おれもおれで、全然、そんなもういつでも欲しいし、
そんなこと言われたら、もっと待てなくなる。
「ううん。とりあえずじゃあ、部屋行こ、まずは」
『ん、』
おれにはおれの、穂波には穂波の個室があるけど。
寝室が、結局おれらの部屋だ。
庭に隣接してるし、寝る以外でもそこで過ごす時間はかなり多い。
「…穂波先行ってて、部屋片付けてから行く」
『え?』
「え?」
『ううん、先行ってる、ね…』
「ん、すぐ行く」
この部屋にコップとか置きっぱでいくのはいやで。
いつもちゃんと片付けるようにしてる。
パソコンの電源落として、さっと机周り整えて、エアコンも切って。
コップを持って一旦、台所に向かう。
それから歯磨きしてたら、
「おー、研磨。今から寝んの?」
「ん、クロ起きてたの」
「いや、なんか目、覚めて。トイレ行ってまた寝るわ」
「ん、おやすみ」
「……穂波ちゃんは俺が寝るより前に部屋戻ったけど、まぁ、そりゃそうか」
「え?」
「穂波ちゃんは先に寝てんだな、じゃ、おやすみ」
「…穂波は部屋で…… ん、おやすみ」
寝てはいない。
おれを、待ってるけど……
『ううん、先行ってる、ね…』
そう言った穂波恥ずかしそうな顔を思い出す。
おれはすぐ行くってことに気が行きすぎて、なんでだろ、とは思ったけど、
そんなに気にしてなかった。
……出会ってからもう何度もシてきたけど、
確かに、待っててとか、なかった。
いや、初めての時、ゴムを取りにとかはあったけど、
なんか、今日のはそれとは違う。
どんな表情して、どんな心境で、
今、穂波はおれのことを待ってるんだろ。
想像すると、なんか…
唆られた。