第12章 Hi!
ー穂波sideー
「…何やってんの」
こけたままの状態で、クロさんと話を続けていたら研磨くんの声。
「あ、研磨、これはだな」
「うん、クロ、別に慌てなくていいよ、なんとなく察しはつく」
「……」
研磨くんはペタペタと足音をさせてこちらに来ると、
わたしの手から蚊取り線香のやつをすっと取った。
「はい、一旦穂波離れて。
何を力説していたのかはわかんないけど、そんなにくっついて話すことでもないでしょ、クロと」
『…ん、研磨くんありがとう』
「…ふ 笑 穂波、俺ちょっとだけパソコンの部屋行ってる。
また戻るつもりだけど、もし居なかったら寝る前声かけて?」
『ん、分かった』
「ん、」
ちゅっと額に口付けて。
すこし考えて。
それから唇に軽いキスを落とすと、研磨くんは立ち上がった。
「じゃあね、クロ。おやすみ」
「おやす… ってお前戻ってくるつもりって言ってなかった?」
「そうなんだけど。でも穂波が先に寝るかもなって」
「穂波ちゃんが寝るなら戻るつもりはないってことね。はいはい、おやすみ〜」
やれやれ、とクロさんは伸ばしていた脚を曲げて胡座をかいた。
わたしは研磨くんに触れられた額と唇に手を添えていた。
「…いやいや、もう何度も、そこかしこにキスされてんでしょ。
ってか研磨普通に俺の前でキスしていきやがって。
ほんとなんなんだよ、あの、感じ。
俺の知ってる研磨のままで、欧米か!?みたいなことするようになっちまった」
『……』
「…すげーな、穂波ちゃん。 よくも俺の研磨に」
『クロさんの研磨くん……』
「いや冗談、復唱しないで、ぽっとしないで」
『……研磨くんにされるキスは、どんなに軽くても、全然違うの』
「……」
『研磨くんが研磨くんだからなんだよ。
研磨くんだから惹かれて、だから研磨くんに似てるから惹かれるってものじゃない』
「……」
『とてもありきたりな言葉だけど、わたしには研磨くんしかいないの。
だから、カズくんとのハウスシェアも、わたしにとっては検討する必要もないことなんだ』