第12章 Hi!
「…え」
『…』
「いや、それはどーいう 笑」
『ぶっ…笑 ごめん、全然わかんない 笑』
穂波ちゃんなりにしてみようと思ったんだろう。
いわゆる、エロい仕草を。
でもこの子、天然だから。
考えてもちっとも出てこなかったんだろうな。
俺に迫ってきそうなその一歩にじり寄ってくるような動作とセリフまではすっげーエロかったのに。
そこから首を傾げてうーん…って考え込んで。
ちょっと待ってみたけども、いい加減笑っちまった。
『ねぇ、今どんなこと想像した?クロさんやってみて?』
「うん、なんでだろうね、そのセリフはエロい。言い方も」
『…えー、ま、いっかぁ。 なんの話してたっけね』
「……」
『あ、そこ蚊取り線香…』
この子はほんっと能天気でナチュラルにエロくって。
よくもここまで無事に育ったもんだよとか、
考えながら後ろに肘をついて体を半倒しにしようと思ったら
背中のとこに蚊取り線香のやつがあったみたいで。
『…おっと』
「…うぉっ… と」
『…セーフ』
「いやアウト」
『え、アウト?』
蚊取り線香のやつを取ろうとしてくれて、
そんで俺は俺で一旦体勢戻そうとして、
ぶつかって、唇同士がふっと触れて、そのままなだれ込むように2人で体制崩して。
簡潔にいうと今は、俺がまるで迫られてるような。
押し倒されてるような、姿勢になってる。
一度俺の胸にばんっと顔をぶつけた穂波ちゃんは、
俺の胸に手を添えて身体を少し浮かせて セーフ っつったわけだけども。
「うん、これでセーフと思ってる君が心配だから細く言っていこうか」
『……』
「まずさっき事故とは言え、キスしたよね?」
『でもあれは事故だった』
「……事故でしかなかったと片付けられる俺の心のやり場は何処」
『……』
「ドキッとかしなかったわけ?」
『え、だって、本当に一瞬で、…ってだってね、そもそもね、
今わたしの右手には陶器のぶたさんがいるの。しかも火のついた蚊取り線香が入ってて』
俺の左腕にやわらか〜いおっぱいを押し付けたまま普通に話し出す穂波ちゃんに
ムラムラするようなイライラするような呆れるような。迷走気味だった。