第12章 Hi!
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送別会のその他のいろいろはまた、機会があった時にゆっくりと思い出すとして。
夕方、部活終わりのリエーフくん、芝山くん、犬岡くんに球彦くんまで家に来てくれて
割と遅めの時間にアーティストのツアーに同行していたツトムくんも来て、
それはそれは賑やかで楽しい夜になった。
翌朝の朝食だとか、みんながどんどん帰っていく感じとか…
初めてのメンバーで初めての場所なのに
何もかもがどこか懐かしくて眩しかったのを今でも鮮明に思い出せる。
──京治くんをはじめとする東京勢も帰ったあと
最後に音駒勢だけが残って。
名残惜しすぎて、自分で言うのも変だけど、珍しく引き止めた。
夕飯作るから食べてかない?って。
クロさんの驚いた顔、その後の研磨くんへの目配せ。
夜久さんの驚いた顔、その後のにかーって笑顔。
海さんの安心する、あのにこやかな表情。
山本くんがはっと息を飲む音、それからそのあと何か言おうかためらう気配。
福永くんの、夕飯一緒に作ろうっていうジェスチャー。
リエーフくんの屈託のないやったー!って大きな声。
芝山くんの少しの動揺と目のぱちぱち。
球彦くんの冷静な眼差しの中にもうっすらと見えた、驚き。
それから、全てを予見したかのように肩にぽんっと添えられた犬岡くんの手の温もり。
返事を待てずにこぼれ落ちる涙を止めることなんてできなくて。
泣くつもりなんてなかったのに。
お別れには慣れてるのに。
寂しさなんて、感じてないと思ってたのに。
わたしは、みんなの前でわーんわーんと声を出してしばらく泣いた。
『うぅ…ごめん、こんなつもりじゃ』
「おぉ、俺らも泣かせるつもりなんてひとつもなかったし
今日はさっと帰るぞって言ってたし言われたんだけど」
「研磨にな」
「…だって、さ。独り占めしたくなるのわかってたし」
「でも、こんな姿見せられちゃあ、ねぇ?」
「そーっすよ!研磨さんここは、研磨さんらしくどーん!と」
「ちょっとリエーフ何それ、なんでおれがどーんになるの」
口をひらけば懐かしい、愛おしい、
音駒メンバーの会話がそこに広がって。
研磨くんの手をぎゅっと掴んだまま、
犬岡くんの胸を借りてまた、びーびーと泣いた。