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【ハイキュー】 続・波長 【孤爪研磨】

第12章 Hi!


ー穂波sideー









辞書は押入れのとこに置いてある。

アメリカに郵送で荷物を送る予定はなくて、
いつものスーツケースで行くつもりで。

カリフォルニアは小さい頃から行っている土地だし、知人も多くいる。
そしてなによりお兄ちゃんの家に住むから。

だからこの部屋にある衣類と、パソコン関係と、
あとそばに置いておきたいなって思う厳選した本など。
木彫りのたぬきとそれから、辞書。

漢字辞典はじめ辞書いろいろはお兄ちゃんの家にもあるけど、
この小さめサイズの国語辞典だけはハワイにも持っていってたやつで、
なんか、一緒にいたくて。

なのでスーツケースに入れる予定の物なのでとにかく直ぐ取り出せるとこにあった。










治くんは部屋を見たいだけだし、わたしも辞書取りに来ただけで。
おまけにここは一人暮らしの家でもないし、
家の中に二人きりの状態でもない。

何を柄にもなく警戒してるんだろうって馬鹿馬鹿しくなって普通に部屋に入ったのだけど。











辞書をとったのを確認したかのように話しかけてきた治くんを振り返ると、
たぬきを手のひらに乗せて指ですりすりしながら、治くんは立ち上がって。

欲が出てきた、と言った。




研磨くんは別格として。

この世に色っぽい人はいっぱいいるし、
普段見せない色気には男女関係なくふっとした瞬間にくらっとしたり。
そんなことばかりのわたしだけど。

どうにもこうにも治くんは……色々が性癖に刺さるのかもしれない。
といまさらそんなことを呑気に思った。







たぬきを撫でるその指が、
長めの前髪が、立体感のある首筋が。

穏やかな声色が、どこか気だるそうな空気感が。

そしてさっき、一瞬見てしまった驚くほどに冷たい視線が。











その色気に、身体が小さく後退りした。
頭で考えたそれではなく、身体が、勝手に。

それはまるで、次に言われることを予見して、
その先に起こることを期待しているかのような後退りだと、ぼんやりと思った。











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