第12章 Hi!
『17dollers and 50 cents』
「17ドル50セント… thank you」
『No worries』
学校の教科書に書かれてる感じに言い直しただけだけど、
ゆっくりと言い直してみたら伝わって、
じゃ…って普通に去ろうとした。
その人もお財布を開いてお金を払おうとしてた。
その一歩前の一瞬の目を合わせてって瞬間。
『………』
「………」
カチッと目があったその人は確かに見覚えがあって、
でもまさか渡米した次の日に、観光地でもないアーバインの街の小さなベーカリーで会うとは思わない人で。
少し、目を合わせたまま固まってしまった。
『…牛島、さん?』
「あぁ」
『わぁ… 牛島さん…! あ、わたし…』
「知っている。五色と白布の…」
『………』
「……五色はいつかあなたの苗字が五色になると言っていた。
だがあの日は白布と約束を……」
「what’s going on? How come you guys are far from romance」
(どういう状況?どうしてだかロマンチックな展開には見えないんだけど)
レジの人の声に促されるように、
牛島さんは代金を払ってコーヒーとサンドイッチを受け取る。
『お時間ありますか? 良かったら外のベンチで一緒に』
「あぁ、そうする」
『……あっと、すぐに行くのでどうぞ先に座っててください』
「いや、ここで待つ」
どうしてかな、牛島さんの体格はアメリカでは特別大きいわけではないのに。
その威厳が、その風格が。 ここにいてもすごくて。
お店でただ立っているだけなのに、なんていうか、すごい迫力。
そんなことを思いながらサンドイッチとオレンジジュースを頼んで、
牛島さんと外に出た。