第3章 くじら
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熱いお茶をすする。
京治くんと並んで座って。
ふぅ…
「あの、さ。 穂波ちゃん」
『…ん?』
「俺のこと、すごい気にかけてくれてありがとう。
でも俺には彼女がいるわけじゃないし、やっぱり今気にするべきは俺のことじゃないと思う」
『…ん』
「それにさっき、俺を誘ったって言ってたけど…」
『………』
「…それはもう、しっちゅうだから」
『 ! 』
…それは、一体どういう?
「…そうだな。 先にもう伝えておいたらいいのかな」
『…?』
「いや待てよ…」
京治くんはぶつぶつと呟きながら、何かを考えてる
「前に、何度か彼氏じゃない人にキスされたことがあるって言ってたよね」
『…ん』
「それで、いつも孤爪に伝えてるって」
『…ん』
「それ今回もその…」
『わたしの都合になっちゃうけど、話したいと思う…
京治くんのことも研磨くんのことも考えてない自分勝手な気持ちを言うと。
黙っておくってことは多分、わたしにはできない』
「え、俺?なんで俺のこともまた気にしてるの?」
『研磨くんとお友達だし…』
蛍くんとは友達、ではなかったし…
『それに京治くんには好きな人がいるでしょ。
ずっと、大事に想ってる好きな人。
わたしね、ほんとに京治くんからね、好きな人の話を聞くのがすきだったの。
…すきなの、今でもね。 すごく幸せな気持ちになるの、思い出すだけで』
「………」
『たとえ、さ、その子が彼氏とずっと仲良しでもさ、
ううん、もしお別れしたって、だからってお付き合いできるってわけでもないだろうしさ…』
「………」
『でも…それでも応援したいなっていうか、なんだろう…』
「………」
だめだ、自分のしたことの愚かさに涙が出てきそうになる。
でも、今わたしが泣くのとかほんと、なに?って冷静に自分が嘲る。
ぐっと堪えて、話を続ける。
『京治くん、話してくれたでしょ、前に。森然での合宿の時…』