第11章 ラングラー
ー研磨sideー
ポータブルクーラーの能力はすごくて。普通に寝れた。
あとマットの質も大事。
足や腕を思い切り伸ばせるわけじゃないし2人で寝ても広い、というわけではないけど。
でも全然、普通に寝れた。
ベッドで寝ててもどっちかが丸まってること多いし、くっついてることが多いってのもあるかも。
今は7時。
目が覚めてしばらく、ごろごろしながら携帯いじってた。
車の外に出ると良い匂い。
スープかな。
「…おはよ」
『おはよう、研磨くん。寝れた?』
「うん、普通に寝れた。 クーラー切ったけど良かった?」
『うん、もちろん。ありがとう。 お茶飲む? 冷たいのもあるよ』
昨日店を出る前に、保冷瓶に冷たいお茶もらってた。
それをクーラーボックスに入れてたから、確かにまだ冷たいだろな。
「ん、飲む。 冷たいの」
『はーい』
ふっと海の方をみるとサーファーがちらちらいて。
だから駐車スペースにも車があって。
それでもここは穴場なんだろう
そんなにすごいいる感じもなければうわついた感じもないっていうか。
落ち着いた空気が流れてるのがここにいてもわかる。
昨日のとこは昨日のとこでおもしろかったけど。
ちょっとピーンってした空気を感じた。
上級者のもう一個上くらいにならないと、入れないスポットらしい。
穂波はそんなこと言わないけど、ビーチパラソルに入れてくれた人が言ってた。
スケボーよりはマシ、って言ってたけど相当上手いんだなって。
見ててなんとなくわかったけど
あのビーチの暗黙のルールみたいなの聞いて、しみじみわかった。
ゆったりと波に乗ってる穂波が見たいな。
まぁ、まだ行き先は幾つかあるしみれるだろうけど。
それでも昨日のとこでも穂波の空気は相変わらず柔らかくて
おれはやっぱり思った。
穂波は自然が、海が、しっくりくるなって。
花とか、風とか太陽とか。
そういう明るい印象のはもちろんだし、雨とか月とかもいい。滝壺とかもよさそう。
だからなんだろ。
どんなにいそがしくしても、穂波を忘れることなんて不可能なんだろうなって思う。
それって穂波に片想いしてる人たちにとってどうなんだろ、とか。