第11章 ラングラー
ー研磨sideー
裸じゃなくていいからとか言ってたけど、それはおれが、か。
躊躇なくワンピースを脱いだ穂波は裸で、
ライトとほんのりとした満ちていく月明かりに照らされた穂波の裸体は、
不意打ちなことが拍車をかけて、すごく綺麗で、魅惑的で。
それだけで勃ちそうだった。
何勃ちだろこれ、とか思ってたら ダツ、ってワード。
『ダツはね、なんか口がすごいとんがった魚なんだけど、光があるとそこに飛んできて。
人に刺さるってことがちょこちょこと起きている』
「刺さる…… だからライトは持って入らないってことか」
『…ん、そ。 ねぇ研磨くん』
「…ん?」
『手だけじゃやだ』
「ん、おれももう無理」
膝上まで浸かったとこで、穂波が飾らない言葉で言う。
おれの返した言葉が合図かのように、穂波の手がおれの首に伸びる。
そのまま、唇が重なって。
しばらく、キスをした。
それからまた、手を繋いで沖へと向かって歩く。
臍あたりまできてまた立ち止まる。
さっきから気にはなってたけど…
「なんで光るの。なにこれ」
『夜光虫。 大好きなの、わたし』
おれや穂波の動きによって水が動いて、それに沿って小さな何かが無数に光る。
ぽつぽつとした光じゃなくて、なんだろ… 光が流れてる感じ。
こんなの知らない、初めて見た。
「何これいつもいるの」
『ん、プランクトンだから大量発生する時とか時期とか。
入らなくても光ってるのが見える時や場所とかもあるんだけど…それもうっとりするんだけどでも』
「ん、」
穂波はきっと、入らずにはいられない。
それからこうやって、自分と海に呼応するように光るのがまた、
きっと穂波を高いとこに誘う。
現に今も、言葉選びはいつもと同じだけど、
声色が明らかにうっとりしてる。
うっとりしつつも、落ち着いてて、ちょっと、この世から離れていってるみたいな、声。気配。
俗世から遠いところに行ってしまいそうな、穂波のあれだ。
それはちょっと怖いくらいなんだけど、
でも同時にすごい魅惑的でおれを唆る。