第10章 梅と
ー穂波sideー
「聖臣くん、梅ソーダ飲む?」
向こうで治くんが訊ねる。
なんだか、オンラインでパーティーって、
これはこれで楽しい。
枠っていうのは時として、枠がない時より広がりを生む、気がする。
こんな風にしか会えないけど、
だからこその広がりが。
「あるの?」
「あんで、俺製と穂波ちゃん製どっちも」
「………」
「どっちがええ?って聞かんからな!絶対穂波ちゃんのって言うんやろ」
「…いや、治くんのを飲む」
「あ、え、は!?マジに!?意外すぎるんやけど… ていうか、聖臣くんって誰の部屋でも入れる感じなん?
もっとこうな、どちゃくそ潔癖っちゅー印象があんねんけど」
「侑の部屋には入らない」
『…笑』
「なんでやねん!」
「あー、まぁ、分かるわ」
「聖臣言ってたよなー、治くんには清潔感を感じるけど侑くんからは感じないって。
双子なのにこの差はなんなのかって」
「いや古森くん、その情報いる!?」
「オッホ……」
『でも実際』
「おー、なに、穂波ちゃん」
『実際、どっちもどっちって感じする 笑
けど、治くんは食べ物への愛がすごいから、
そういうとこから漂ってる清潔感は、絶対ありそう』
「…うん」
『ねー、聖臣くん♡』
「ああ…」
「おーーーいみんなー!乾杯!乾杯するんでしょーーー!!!」
「…ふ 笑」
光太郎くんが画面の端でそわそわ、そわそわしてるなーって思ってたら
痺れを切らしたように大きな声でそう言って。
そうだねそうだね、ってなって飲み物を手元に用意して。
古森くん、19歳おめでとう!!!
ってこのメンバーで、乾杯した。
オンラインじゃなかったら、聖臣くんだけでことが済んでたかもしれない。
オンラインだから、こうなった感じ。
サプライズのために侑くんと光太郎くんはいたかも、しれないけど
治くんはいなかっただろう。
いつか治くんがお店を持ったら、その時はまた話は違うけど、
今年のこの状況だったならきっと。
そんなことを思いながら、
今だけのこの感じを味わいながら、
海苔に、酢飯に、手を伸ばす。