第10章 梅と
「もしもし」
「…あ、カズマ、なんで1時間?」
「なんだっけ、聖臣のチームの人たちが誰かの家に行く予定らしくて。
予定が1時間後らしいよ。リビングにプロジェクターで映しておいて、ジャーンってするって」
「………」
サプライズでも何でもいいんだけど、
おれが動くようにさせられるのは正直……
はぁ… でも、穂波の表情想像すると仕方ないかってなるこれは何。
「穂波は?」
「パズルみたいに段取り組んで、今はすごい手際でケーキ仕上げてる」
「角名クンは?」
「部屋の準備とか」
「カズマは?」
「おれは酢飯を扇風機に当てて、たまに混ぜながら、二人の手伝い」
「………カズマってさ」
「なに」
「上手いこと動くよね」
「は?」
おれとは違って、手伝いもちゃんとしてるもんな、日頃。
おれは、穂波といるときはそれなりに動くけど、
部活でも実家でも、動かなくていいなら動かないできた。
「…環境違うし。 ほら、多いんだよ、サプライズって。アメリカとかヨーロッパいくと」
「あぁ」
「たまたまその場に居合わせて手伝わされるってこと、結構あるの。
それだと穂波の笑顔なしだけど、今日は特典つきだし」
「特典…」
「研磨くん、ありがとう〜♡ って言う穂波想像して、ほら、動いて。
元也くんの車にスケボー乗っけたままだと思うよ」
「スケボー…… まぁ、とりあえずわかった。 1時間後ね」
「ん、よろしくー」
「…あ、ちょっと待って、なんか魚以外に買ってくものない?」
「聞いてからメールする」
「ん、よろしく」
これからもサプライズなんておれが企画することないと思う。
高校にいた頃、バレー部の誕生日とかサプライズあったけど、
おれは大体穂波といたか、先に行ってたかだったから。
おれと穂波、2人で過ごす時はそういうのはないし。
ここまで、この準備の渦の中に入るのは初めてだけど……
しかもあまり面識ない人だし…
でもまぁやるしかないし、元也クンだし… 気持ち的には重くないかも。
ていうかクロ、穂波の送迎会的なことやるって言ってたな。