第10章 梅と
ー研磨sideー
元也クンの車の助手席に乗って、魚屋まで。
今日、手巻き寿司にするんだって、とか。
よく行く店なの?とか。
元也クンのちょうどいいコミュ力のおかげで、助手席でもラク。
【研磨、1時間くらい古森くんと時間潰せる? サプライズしたいって言ってる】
「え…」
1時間は無理。魚屋に行って帰って、車だと15分で済むとこをどうやって1時間潰せっていうの。
おれが、元也クンと。
「どうしたー?」
「んと、なんか魚以外にも買ってきて……って」
「おけー 店は研磨くんわかるんだよね?」
いやちょっと待って、適当なこと言っちゃったけど、
そもそも魚先に取りに行って1時間ってまずくない?刺身用だよ?
今、7月末。 クーラーボックスは持ってきたとはいえ……
「ん、ちょっと待ってね、今から何がいるのか聞く」
「ははっ ウケる。 とりあえずこっちでいいの?」
「あ、えっとね、そこの広場の駐車場、 とりあえず、止まろ」
「え? ここ? あー、そっか、魚はあとの方がいいもんね」
「…ん あ、元也クンごめん、ちょっと、別件の電話かけなきゃ……
車出してもらった挙句、振り回してごめん、ちょっと待ってて」
「ぜーんぜん! 研磨くんと2人で車のるなんて思ってもみなかったからなんかアガる」
「…ん、ありがと」
元也クンのこういうとこ、穂波と似てるな。
嘘がなくって、なんだろ、心の底からなつっこいっていうか。
んー、むずかしいけどなんか、似てる。
人に気を遣わせない、天性の性質みたいな、そんなの。