第10章 梅と
ー研磨sideー
「穂波もしかして」
『…んー?』
「生理、来そう?」
『へ?』
なんか、すっごいつまみ食いしてるんだよね、穂波、さっきから。
これ、生理の前多いなーって、思ってたから。
『あ、つまみ食い…… ね、うん、そうかもな、とは思いつつ』
「…そっか、でもまぁ、思いは変わらないし」
『うん まだ、わからないけど』
「ん、どっちも大丈夫だから、どっちも大丈夫」
『うん』
「安全日、ってクロが言ってたから、妊娠しやすいのかと思ったけど」
『……ふふっ』
「…?」
『ううん、なんでもないよ。 研磨くん大好き』
「…ん、おれも」
『そうだあのね、』
チーズケーキの生地を型に流し込んで、冷凍庫に入れて。
使った道具を洗うためシンクに移動しながら穂波が喋り出す。
『わたしね、もし、妊娠してても、アメリカいこうって思ったよ』
「うん」
『もちろんお医者さんとかに相談してからのことだけど…』
「うん」
『それを想像するとね、わくわくしたよ。
だから、当たり前にそんな選択肢をくれる研磨くんってやっぱりすごく素敵だなって思った』
「…別に …別に普通だよ」
『それをね、普通だって心底思ってる研磨くんがね、素敵なの』
「…いやだから別に…… 普通だから」
『すき』
「…ん、おれも」
『すき、すき』
ネジが外れちゃったのかな… いつにも増してストレートで、
いつになくぐいぐいくるな。
「…ん、わかった。ありがと。 んと、」
『…ん』
「穂波、寂しくなってる?」
『んん〜…… さみしくなって……ない』
「…ふ、そっか、おれは寂しいよ」
『……ん、』
「きっかけ、一緒にいれるきっかけ、理由、無意識に探してるんだな、って思った」
『……』
「あと、3週間。 おれ、大会入れてない」
『……』
「やることは株だけ。 だからじゃないけど……ん、と」
『……』
「おれの時間全部あげるから、穂波の時間全部、ちょーだい」
おれらって一緒に住んでても、緩急があるっていうか。
自分の時間は自分の時間、みたいなとこあるから。
それが、また、いいんだけど。 なんか、さ。