第10章 梅と
「…わ、こんなの書いてるんだ」
海外のポストカードくらいの画用紙に、レシピが書いてある。
イラストも。
『あ、そうなの。レシピ本から作って、自分なりに上手くできたときに一度紙に書いてみるんだ。
お砂糖の量を調整した時とか、下拵えの段取り追加した時とか…』
「へぇ、知らなかった」
『…ん、研磨くんに出会う前からね、やってて。 …もちろん自分のためなんだけど研磨くんに出会ってからはその、』
「…その?」
『こども……』
「こども?」
『…なんでもない』
「え、気になる」
『………いつかのわたし… たち…の子が、もしかしたらわたしの作るおやつを好きでいてくれて、
もしかしたら、おやつ作るのが好きになるかもしれなくて、それで……』
かぁぁぁって穂波の顔が赤く染まってく。
わたし、のあとにちっさくたち、って言ったのもちゃんと聞こえた。
『そんなことを想像したり… してたりする …あぁなんでこんなこと言い出しちゃったんだろ』
手に持ってたボウルで顔を覆って、しゃがみ込む。
おれたちの、子ってことだよね。
なにそれ嬉しいし、かわいいし。
何それ。
『…ふぅ、気を取り直して……!』
「…!」
可愛すぎる、って思ってそばにいたくてしゃがもうと思ったんだけど。
おれのおでこと、穂波のおでこが見事に、ぶつかった。
『…ぅ……』
「………」
『研磨くん、ごめんね、大丈夫?』
「ん、痛い」
2人で額を抑えて今度こそしゃがみ込んで、
それから少しして、目が合った。
おでこ抑えながら心配そうな顔しておれのこと見てる穂波がかわいくて仕方なくって。
「…ふ 大丈夫だよ、 それより」
『……?』
「それは女の子?男の子?」
『っ………』
また、顔が赤くなる。
いそがしいな。 それがかわいいから、わざとやったけど。
『どっちでもいいんだよ、なんだっていいの、
お菓子つくる男の子でも、お菓子作らない女の子でもなんでもいいの。
ただ、ただね、ただ……』