第10章 梅と
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さくっと支度をして玄関で靴履いてると、足音。
振り返るとそこには穂波ちゃんじゃなくて、研磨くん。
眠そうな顔で、消えそうな声で、おはよ… って。
「あ、おはよう。 …株?」
「ううん… 株はまだ…… ふぁぁ……
穂波が小川に行ってくるねって言ったのは聞こえてたんだけど
まだ眠ってて、聞こえてただけだったから。
…起きれたから、顔、見にきた」
「…へ、へーそっか!」
あまりに普通に、どこか子供っぽく、ラブラブ具合を露呈してくるから、
この、あの、研磨くんが、寝ぼけながら。
吃っちゃいもするよ。
行ってくるね、って言っただけじゃないだろうし。
絶対キスされてるし、とか。
それから俺への警戒心のなさ!
っていうか研磨くんはきっと誰に対してもこんな感じなんだろうな。
だから逆に、負けを認めざるを得ない、みたいな。妙な貫禄。
俺に警戒してるカズくんが可愛く思えてくるな。
『あ、研磨くん』
「…ん、」
『…ん、』
研磨くんはぼすって穂波ちゃんに抱きついて。
穂波ちゃんは少しよろめいた。
「よかった、会えた」
『ん、帰ってきたらまた、部屋行くね』
「ん……」
『…眠いね、お部屋いこ』
穂波ちゃんは目くばせでちょっと待っててね、ってして、
2人の寝室に向かって歩いてく。
研磨くんはだいぶ体重を預けてて、
重いかもだけど手伝うのも野暮だな、とか思って見守る。
一度よろよろって壁についた時に、
研磨くんは下から覗き込むようにして穂波ちゃんの唇を奪った。
それからしばし、えっろいキス。
そんでまた、かくんってなって、慌てて穂波ちゃんが支えて。
また寝室まで歩いてった。
酒飲んでる人の介抱みたい。
そうそう、俺、みんなと酒飲むの楽しみなんだよなー!
みんなって、みんな、な! すっげー楽しみ。
研磨くんと穂波ちゃんとも飲めるといいなー、とか思う。