第10章 梅と
・
・
・
洗濯干すの一緒にやって、
梅も干しちゃう?ってなったけど、量も量だし後でみんなでするかってなった。
この何でもない家事が特別なことになる威力、半端ない。
ちょー幸せだったし。
あー研磨くんずる……
『ねぇ、抜け駆けしてさ、果物食べない?』
「…笑 抜け駆けして果物。 かわいい」
『それから、小川に足つけに行こうよ』
「お、いいね、それ。抜け駆けっぽい」
『ね♡』
いやー勘違いするよ。
これは勘違いだよ、ってしっかり解ってる、安全且つ厄介な勘違い。
ま、ここにいる間だけだし。
手、出さなきゃ大丈夫。
それからここで待ってて、って言われたけど一緒に台所行って、
桃とメロンを切る穂波ちゃんを傍で眺めて… ってしてたら、まじで、
腰とかに手が伸びそうになるから危ない。
夜は夜でマジックみたいなのあるけど。
朝、2人きりってのも、かなりマジックある気がする。
『ねぇ、これ持ってって川のとこで食べよっか?』
そんな葛藤を心の中で繰り広げてる俺を一つも警戒することなく、
俺を下から覗き込んでくるみたいにして、見上げて、かわいい顔で訊いてくる。
「え? あ、うん。 いいね、それ。 でも、」
『…?』
「カズくんに突き落とされないかな」
『ふふっ ダイジョーブ、ダイジョーブ。
カズくんたちにはちゃんと置いていくし、手紙も書いとくから。
お味噌汁のお出汁も取ってあるし、納豆もあるし、お米も炊いてある』
…いや完全に勘違いしてる気がするけど、ま、いっか。
「じゃー、その案で行こ。ちょっとトイレとあと、ケータイとか持ってくるわ」
『うん、じゃあ玄関で♡』
穂波ちゃんはガラスのタッパー?にさっきカットしたフルーツと洗った葡萄を入れながら、
くしゃって笑って言う。
俺、その笑顔に弱いしそれに。
語尾に♡マークを感じるのは勘違いの賜物か?