第10章 梅と
ー穂波sideー
「なんなん、あの顔。どーいう顔?」
倫ちゃんがわたしを肘で小突きながら、研磨くんを顎で指す。
研磨くんは今しがた話題に上がったトピックのことを考えてるんだろ。
愛おしい愛おしい、わくわく顔をしてる。
「ねぇ、角名くん。例えば?」
「あぁ、そうだった。 やっぱアイスにトッピング全部のせでしょ」
「…んー、全部のせは興味ないけど、わかる」
「だなー俺もそれは別にやりたくねーけど、意味合いはかなり伝わるなー!」
『わたしも全部乗せより、その前に倫ちゃんが言ってたみたいなカラースプレーダブル、とかの方がワクワクする』
「あぁまぁ確かに。俺もそれは心ん中で思ったかも」
「古森くんは?」
「えー!なんだろなー… やっぱ乗り物系こだわるとか?
なんかさ、あれ、大人がやってるけど、元を辿ると子供の頃のキラキラ詰まってね?」
「カスタムってこと? タイヤとかもろもろ」
「そーそー、シートとか」
「あぁ… なんかちょっと逸れてる感じはあるけど、そっちのがわかる」
「スケボーもあんの?そういうの」
「うん、あるよ。ベアリング一つでぜんっぜん変わるから。楽しい」
「へー…ベアリング?」
「うん、まぁなんか、ウィールの回転をよくするパーツ」
「へー、やっぱタイヤ系はおもしろいよなー!」
「冷凍庫をチューペットでいっぱいにするとか」
『…笑』
「いやなんかさ、」
「角名お前さ、」
「「すごい子供っぽいよね」」
『…笑』
うん、倫ちゃんかわいい。
「いや今そういう話題じゃん?」
「いやでもそれでもそんな俺思い浮かばないんだよね」
「ていうかそれより、研磨くんはどうなん? なんか顔ゆるゆるだけど」
研磨くんはだんまり、静かに。
きっとその緻密な作りの頭の中を、ファンタジーとロジックでいっぱいにして。
わくわく、ほわほわ、ほっくほくな世界に旅に出てる。
…かわいい、表情。