第10章 梅と
『…研磨くんはどっちがいいかな?
一緒に食べたらいいかなって思いながら、分けてもらっちゃった』
穂波が選んだ二つはトッピングがない。
なんか、初めての店だし、家近いし、とかかな。穂波っぽい。
「ん、どっちも美味しそう。 おれ選んでいいの?」
『うん!』
「レモンにする」
そう言うと、そう言っただけなのに、
穂波はにぱぁって嬉しそうな顔して。
おれにアイスと、それからスプーンは要らないって店で言ったんだろ、
月島たちにもらったのを追加で揃えた、クチポールのデザートスプーンを差し出す。
おれがレモン取ったから、穂波はミルク。
「その穂波の嬉しそうな顔は自分の食べたい味が自分とこきたからなん?」
「いやどうみても、研磨くんがレモン選んだ!みたいな感じじゃない?」
「いやだからそれが、裏をかくと…」
「いや、裏とかないでしょ絶対!」
…うん、別に裏があってもなんでもいいけど。
でも穂波はそういうんじゃない。
じゃあ何がそんなにうれしいの?って聞かれたらおれもよくわかんないけど。
「ねぇ、さっきの角名クンの話」
「え、なに? なんか俺話してたっけ」
「大人になったらできる、究極のこどもっぽいこと」
「あー、カズくんなんかある?」
「…んー、なんだろ。でもなんか、それちょっと面白いかもって思って。例えば何?」
「………」
例えば、なんだろ。
おれも結構その、ワードっていうかテーマみたいなのに、ワクワクした。