第10章 梅と
ー古森sideー
俺もずっとスポーツしてきてるし、
簡単そうにやって見えることが簡単だとは思い違ったりはしない。
…けど、
「…あーガチで痛い」
「痛いしその割に浮かないし…… なんなん」
スケボーって痛い。
『怪我しないように、ほどほどに、ね。 なんか持ってやったら転ばないよ』
「おー ていうか2人とも俺らは気にせず滑って来てよ」
『あ、うん! カズくん、滑って♡』
「……あ、そっか、なんか今日は新しいトリック教えるなって研磨言ってたな。 …何? 赤ちゃんできたの?」
『へっ…』
「えっ!?」
カズくんは小さい声でしゃべってるけど、俺には聞こえちゃた。
でも角名には聞こえてないっぽいし、これ以上は掘り下げるまい。
『まだ、わかんないけど…… その可能性もあって。それで、うん』
「…その可能性? …よくわかんないけど、気をつけてね」
『うん、カズくんありがとう♡』
そう言ってカズくんは色んなトリックを、
さも簡単そうに、どんどんと決めていく。
でも、そんな上手いカズくんもすげー転ぶ。失敗する。
…スケーターのかっこよさってここにも、あるんじゃね?って。
そんな気がしてくる。転けても転けてもやるし。失敗しても、挑戦したことが大きい感じとか。
痛い、怖いを超えたわくわくに引っ張られてる感じもかっこいい。
バレーしてても痛みや恐怖はもちろん色々あるし、
比較してどうこうってわけじゃないけど。
腎臓破れるとか、脳震盪とか…… それはよっぽど、バレーではないからな。
『カズくんのスケボー、2人に見てもらえて嬉しい』
「…まじでかっこいいな」
「そしてあの塩っぷりもやばい」
他のスケーターがグータッチとか、なんか、色々やろうとすんだけど。
あと、やっぱ界隈では知られてる存在なんだろ、サイン?欲しがってるっぽい人もいるんだけど、
カズくん本当、あっさりしてて。むしろもう、避けてるともとれるくらいで。
みてて苦笑しちゃうけどでも。
どっぷりスケボーの世界にいるはずの子なのに、
染まってない感じがまた、小気味いい。