第10章 梅と
ー穂波sideー
夕方からスケボー行くから、
研磨くんの分だけ夕飯の仕込み。
大会だし、お皿にもるのとかもあれかなって、置き弁にする。
「…あ、やった。 車麩だ。カツだ」
『わ、研磨くん。びっくりした』
下味に漬けがてら戻しておいたか車麩を軽く絞って、小麦粉をまぶしてると
にゅんって研磨くんが後ろから。 びっくりした。
2人で暮らすようになって、お肉やお魚を抜く日、とかも出てきた。
話し出すと長くなるけど、単純に、お肉が食べたい。お魚が食べたい。
っていう日があるのと同じで、他のタンパク質が欲しくなる時があるよねっていうか。
肉か魚、みたいに給食とかで長年培われがちだけど、他にも選択肢はいっぱいあって。
だからただ、食材選びの選択肢の一つに、堂々と存在するようになったというか。
まぁそんな感じ。
そして研磨くんはお麩カツが大好きなのだ。
『休憩?』
「…ん、充電」
そう言ってわたしの腰に後ろから腕を回して、顎を肩に乗せて。 ぎゅうって。
『みんなはゲームしてるのかな』
「うん、ちらっと覗いたら桃鉄してた。なんか、結構盛り上がってたよ」
『桃鉄……』
「いつかやろ、クロとかなんか、みんないる時にでも」
研磨くんが前に、そう言って説明してくれた。
人生ゲームみたいなやつだよって。
これなら穂波もみんなとやりやすいから、
っていう説明にいろいろキュンとした。
わたしのことを考えてくれてることにもだし、
みんながここに集まることを考えている研磨くんにも。
『うん、やりたいな』
「…ん、で、穂波は今いそがしい?」
『ん?ううん? あと、これに衣をつけとこうかなって。
揚げるのも、詰めるのももうちょっと後でするね』
「ん、じゃあ衣つけたら」
『…?』
「部屋行こ」
『ん?』
「部屋、行こ」
『ん、うん?』
車麩は袋全部、12個戻したけれど。
今日揚げてくのは2つだけ。
衣をつけるのもすぐに終わる。
卵じゃなくて、小麦粉を水で溶いてそれにつけて、パン粉をまぶせばおわり。
終わったら… 洗い物してそれから、部屋に… 行くんだって。