第10章 梅と
ー穂波sideー
「古森クンは穂波のことどういう風にみてるの」
『えぇっ…!?カズくんそんなこと……』
カズくんがわたしを好きでいてくれるなんて奇跡みたいなことだけど、
カズくんが好きていてくれてるからって、
古森くんがとかそんなことあるわけないのに。
カズくんはどうしてこうも、対抗心が剥き出しになることがあるんだろう。
かわいい、かわいいから、相手には申し訳ないながらもキュンとしてしまうのだけど。
それにしてもやっぱり、古森くんはカズくんにとって特別みたい。
前の彼に人柄が似てる、って言うんだよね。
この懐っこい感じは確かに似てるんだけど、古森くんは古森くんだ。
「俺?俺は可愛い子だな〜 研磨くん羨ましいな〜ってみてるよ」
「…ふーん、それだけ? ていうかそういうとこがいちいち……」
うん、わかる。
軽い感じでは決してなくて。
でも明るくて溌剌としてて、なんだろ、天真爛漫な正直さっていうか。
それは確かに、前の彼氏に似てるって思う。
…にしてもそんな嬉しいこと、こんな素敵な人にやや間接的に言われると、
わたしはどこで何をしていたらいいのかわからなくなるな、と思いながら、
カズくんが拭いてくれた食器を片付けていく。
「あ!じゃあ俺もカズくんに訊いていい?」
「…まぁいいよ。 おれもきいたし」
「何で俺にそんな感じなの? 俺別にそんな危険人物じゃないと思うんだけど」
「だからだよ、その生粋の危険人物じゃない感じが危険なの」
「え?」
「……似てるんだよね」
「ごめんカズくん、聞き取れなかった」
「…穂波の元カレに似てる」
「え?何が? 俺が?」
「…そ、だからなんか…… ムカつく」
『ちょっとカズくんっ ごめんね、古森くん、そんなこと言われたってって感じだよね』
「…ぶっ ははは! ムカつくか、俺! ウケる! でも理由がわかって良かった〜」
古森くんは一つも嫌そうにも迷惑そうにもしないで、
笑い飛ばすというか… 笑い転げてる。
…うんまぁ、確かに確かに、言われてみればどんどん似てる。