第10章 梅と
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「あー、うまかった!ごちそうさま!」
「ごちそうさまでした」
いやまじで旨かった。
遠慮なく食べてね、って言われてほんとに何一つ残さず角名と食べちゃった。
『おなかぱんぱん?桃とか食べれる?』
「いいの? 食えるよ、全然」
『うん、じゃあ切るから好きにしててね。居間でもどこでも、持ってくよ』
「ありがとー でも俺皿洗うよ、ご馳走になったし」
『…え、いいよ、そもそも土用干し一緒にしてくれてるんだから、そういうんじゃないよ。
ゆっくりしてて、ね?』
「じゃあ、穂波ちゃん片付けたり、桃切ったりしてさ。
その間に俺洗うから話しながらやらない?」
『うん、それは嬉しい! じゃあ、遠慮なく♡』
「ちょっと穂波。 皿洗いもおれ一緒にするのに」
じゃあ皿洗うか〜って思ったんだけど、
なんかほんと、食べる時に使った食器とカトラリーしかない。
ザルとか鍋とかはもう、洗ってあるみたい。
…手際いいんだな。
それから、カズくんがやっぱり、すごい、嫌そうにしてる。
もはやそれにも慣れつつあるけど……
『じゃあカズくん、これ拭いてってくれる?いつもありがとう。
それにこれからアメリカ… んー、うん? …うん、アメリカでもこんな風にできたらいいな』
「…? なんで迷ったの? おれできることはなんでも一緒にやるよ。
でもアキくん家食洗機あるよね」
『うん、でもわたし手で洗いたくなっちゃうから。…いろんなこと一緒にしようね。
うん、なんか今わたし、心決まったかも!』
「…え、なに? なんの心? 研磨と別れるの?」
『ううん、そんなことあり得ない。 けど、ちょっとね、うん』
穂波ちゃんはほんとに迷いがなくなった、
みたいな表情と口ぶりで。
それ見てるだけで、よかったね、って何一つわからないくせに口から出てきそうになった。
「ちぇ、まぁ、そうなのはわかってるんだけど。
どうやったらおれが研磨のとこに行けるんだろ… ていうか古森クンって」
「え、俺? っわ、あぶね」
いきなりカズくんが俺に話題を振ろうとするから、
洗ってる皿が手から滑りそうになる。