第10章 梅と
「いいね、でも研磨くん行けないんじゃない?」
「…ん、おれはいいよ」
「え、研磨いかないの?」
「うん、穂波に新しいトリック教えないでね」
「…なんで?」
「いいから、今日は穂波は角名くんたちに合わせるから」
「まぁいいけど。 穂波それゆかりになる分? こんだけあると紫蘇も多いね」
全部のうちベーシックな紫蘇漬けが七割くらい。
残りがはちみつ漬け。
庭に広がる梅、梅、梅。
今穂波ちゃんが空いてるザルに干してるのは紫蘇なんだけど
「へー!ゆかりってそうやって作るの?」
『そうそう、これを干して、ぱりぱりにして粉にすればゆかりだよ』
「アメリカにも持ってこうね」
『うん、持っていこうね』
カズくんはすって立ち上がって、
まだ少し大きい突っかけを履いて穂波ちゃんのとこにてくてくと歩いてく。
何かを話しながら当たり前のように作業を手伝ってて。
最初見た時は弟だと思ってた。
今も仲のいい弟にも見えるけど、もっとなんだろな、研磨くんにとって代わる存在みたいな。
そんな感じもある。
紫蘇を干し終えると2人は仲良くこっちに向かってきて
『みんなありがとう♡カズくんとお昼作ってくるね。
お部屋で涼しくしてあるからね、好きにしててね』
「mi casa…」
『es su casa♡』
くすくす笑いながらカップル感全開にしてカズくんと穂波ちゃんが台所に消えていく。
いやもう全然弟に見えてこないんだけど…
「あつ… おれ、部屋行ってるから、うん、すきにしててね」
「おー、ありがとー!」
研磨くんはそんな様子気にも留めないといった様子でこの場を去る。
…まぁ研磨くんには当たり前のことであって、実際気にならないんだろうな〜とか、
ついつい人間観察をしてしまう。 俺、結構好きなんだよね、人間観察。