第10章 梅と
ー古森sideー
「え、なんで穂波とその人Tシャツおそろなの」
高2の頃の文化祭以来?
超久々に会ったカズくんは前よりもっとかっこよくなってる。
なんだろな、この子の色気。
男のおれでも年上のおれでも思うんだよな、かっこいいよな〜
なんかいろんな垣根越えちゃいそう〜みたいな。
ジェンダーとか年齢とかそういうの。
倫理観ぶっとびそう。
こんな子にずっと好かれてて仲良くしてて、よく平気でいられるなとか思う。
極め付けにアメリカで一緒に暮らすって、普通にやばい。
おれ、カズくんと暮らしたら新しい扉開いちゃいそうだもん。
カズくんはなんでか、結構俺にきつい感じなんだけどね。
どう考えても接触してるのは俺より聖臣なんだけど、俺にキツい気がする。
それから、今、Tシャツがお揃いなのが気に食わなくて、
初対面の角名への当たりもどうも、キツイものになりそう。
『カズくん、挨拶もせずそんなこと言わないの。倫ちゃん、カズくんだよ。わたしのスケボーの師。
カズくん、倫ちゃんだよ。倫ちゃんは体幹がすんごいの、一緒にスケボーしようねって前から約束してたの』
「どーも、カズくん。倫太郎です。よろしく」
「…ん で、なんでお揃いなの?」
『わたしがプレゼントしたの、それで今日偶然お揃いになったの』
「ふーん… ま、いいや 研磨ともお揃いだし。 暑い… アイスの実ある?」
『あるよ、倫ちゃん達も冷たいもの食べる? チューチューもあるよ』
「あ、食う」
「俺も〜!」
りんごのチューペットと葡萄の持ってきてくれて。
俺も角名もりんごを選んだ。
穂波ちゃんと研磨くんは葡萄のを半分こして。
カズくんは巨峰のアイスの実。
縁側に座って梅だらけの庭を見ながら、冷房の効いた部屋に誰も入ろうとしないで。
あつー うまーとか言いながら時間を過ごした。
セミもみんみん鳴いてて。
すげー、なんか。夏休みの帰省感。
友達ん家だけど。来たの2回目だけど。
『ねぇ、スケボーは夜行かない?夕方くらいからさ』
口に空のチューチューの容器を咥えたまま立ち上がって、
梅酢に漬かってる紫蘇を絞りながら穂波ちゃんが言った。