第10章 梅と
ー研磨sideー
穂波と元也くんと角名くんの3人が梅干しを干し始めて。
ほんとただそれだけなんだけど、量が量だからすごい。大仕事だ。
それにこれ、今日の終わりに一旦戻すんだって。
漬けてたとこに。
で、また明日同じ作業するって。
なんか。
一年分をまかなうってすごい。
今しか採れないものだから、今、まとめてやるっていうのが当たり前のことで。
…あ、これは穂波がいない間のしばらく分と、アメリカに持ってく分と。
おれの実家、佐久早、治くん、穂波の実家……とかへのお裾分け分。
穂波の実家とおばあさんとは交換するって嬉しそうに話してた。
古森くんと穂波がいるの、前も思ったけど見てて和む。
懐っこい犬が2匹いるみたいな感じ。
今日はそこに無気力な感じのキツネがいてそれもおもしろいな、とか思いながら
おれは一旦、部屋にもどる。
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「穂波、カズマから連絡来た。 バス停まで迎えいってくるね」
『いいの? あれだったらわたし行くよ? 暑いし、研磨くんお仕事あるし』
「…じゃあ一緒に行こ。 いい?」
『うん、いいかな?』
会話の流れのまま2人に聞いて。
どーぞーって2人が答える。
「…ん、すごい量だね。もう終わりそう?」
『うん、3人でやったらもうすぐ』
「干して今日は後しまうだけ?」
『ううん、ちょこちょこと裏返したり』
「え、マジに!?」
角名クンがちょっと大きめな声を出す。
だよね、暑いし、明日も同じ作業するわけだし。 …ふ。
『そうなの倫ちゃん。でもまぁあとはゆるゆるやろう?』
「うん、それがいい」
『ちょっとバス停まで行ってくるね!』
「いってらっしゃーい」
穂波はゴム手袋を外して、手を洗って。
バス停まではわりとすぐ、そこなんだけど。
ちょっと独り占めしたくなってたから、
家出てすぐの木に囲まれた道でキスをして、それからまた腕を組んで歩く。