第10章 梅と
ー穂波sideー
梅を20キロ。
6月に古森くんと、それからカズくんも来てくれて一緒に漬けた。
一日中梅を触って、それから泊まって行ってくれて。
紫蘇を入れるのは、ちゃちゃっとわたしがやってしまって。
そして今日、土用干しをしに古森くんとそれからチームメイトの倫ちゃんも来てくれた。
今はまだ車で寝てるみたいだけど。
あとからカズくんも来る予定。
倫ちゃんと約束してたスケボーするんだ。
研磨くんには、危ないことしないで、とだけ言われてる。
まだ妊娠しているかわからないのに、
数日前に起きたあの不思議なようで不思議じゃない出来事によるその可能性を、
研磨くんはうやむやにすることなくまっすぐに向き合ってくれてる。
本当にかっこいい人、素敵な人、って何度も何度も思う。
そしてわたしに対してやや過保護気味になるのが、かわいい。
「はい、麦茶。ここでいい?」
わたしと古森くんがお喋りに花を咲かせてる間に、
研磨くんが麦茶と一口羊羹とお煎餅を持ってきてくれた。
古道具屋さんで二人で見つけた、
籐で編まれた小さな台にガラスが張られたもの。
小さな机と呼んでいいのかな… そんな小さな、台みたいなのにのせてくれる。
「研磨くん、ありがとう! 今日は研磨くん予定は?」
前に来てくれたときは研磨くんはゲームの大会と重なってて
その後も寝てたりして、ほとんど部屋で過ごしてたからかな、
明るく古森くんはそんな風に尋ねた。
「…ん、今日の夜に大会がある。 気にせず、すきに過ごしてね」
「うん、ありがとう。 あ、これお土産。 2人で食べてね」
古森くんは紙袋を研磨くんに渡して、いただきまーすって麦茶のグラスを手にとる。
わたしも一口飲んで、それから縁側からつっかけを履いてお庭に出た。
「あ、ちょっと車の窓開けてエンジン切ってくるわ」
『…あ、車? わたし行ってこようか?』
「ほんと? その方がもしかして角名も起きるかも。じゃあお願いしちゃおっかな。
あ、でも木陰に車移動させたいんだけど」
『おーけーやっとく。 …ってわたしで大丈夫?』
「…笑 わかんないけど、大丈夫! ちょちょいって動かすだけじゃん?」