第10章 梅と
ー古森sideー
7月26日(土)
「こんにちはー!」
ここに来るのは2度目。
前に来たのは6月。
ここっていうのは、
「…あ、元也クン。 どーぞ」
「おー研磨くん! お邪魔しまーす」
「ん、穂波は縁側のとこにいる」
研磨くんと穂波ちゃんの家。国立。
俺は今埼玉に住んでて、今日は車でここまで来た。
「…あれ、角名クンは?」
「車で寝てる。起きないから置いてきた」
「…え、死なない?」
「え?あ、エンジンかけっぱなしだけど 笑 ダメか、穂波ちゃん嫌がるかな」
「そんな、うるさく言わないし、そういうこと人に思う感じじゃないから。
でも窓開けてちょうど木陰のとこに停めとけば死にはしないんじゃない?」
「…笑 うん、そうかも。死なない程度に暑さにさらしとくか。とりあえず……」
穂波ちゃんの顔見よーっと。
縁側のとこに行くと穂波ちゃんはざるとかを硬く絞ったタオルで拭いてる。
前にも思ったけど、ほんと、縁側が似合う。
お洒落な場所とか海外の風景とかも似合う感じするのに、
この古民家とか縁側とかが妙に似合ってほっこりする。
縁側が似合う子、いいな、とか。
よくわかんない項目が俺の中にできちゃったもん。
6月に来た時、大阪にいる聖臣に写メを送ったら聖臣も同じこと言ってた。
【縁側が似合う。かわいい】 って。
聖臣は結局しばらく会えてないから、ちょっと怒ってるっぽいけど(なにに対して?)
でもそもそも俺がここに呼ばれるきっかけってのが……
『あ、古森くん!ようこそ〜 ごめんね、お出迎えしそびれちゃって』
「いいよいいよ、そんなの全然」
『ちょうど今日から3日間快晴の予報だね。すごいね、2人… ?が来れる日に……ん?』
「あ、角名寝てる。起こしてくるわ」
『え、いいよ。寝てるなら寝てたらいいんじゃないかな?
せっかくのお休みだし、今日、早く出てきてくれたんでしょう?』
梅干しを漬けるっていう、目的だった。
それで、それがまたすごい量で。正直ちょっと大変な量。
今回は、それを干す作業を一緒にするために来たってわけ。