第9章 aims
「いや家賃光熱費タダは、家が少々遠くなるのなんてかき消すメリットだわ、普通の学生には」
「…ん、じゃあまぁ、それもあるよってことで。ていうか……」
「…?」
「もしおれがアメリカ行くなら、住んだらいいじゃん」
「いやまたお前は、おれの席で弁当食べればいいじゃんみたいに言う」
「…?」
「お前のその、妙な軽さは、いつまで経っても……」
妙で、魅力的で、力が抜ける。
「なんでもねーよ。 そういう考えもあんだな、まぁとりあえず、結果待ちだな。
先に生理くるとかねーの? 今回は検査する感じ?」
「あ、いや、すぐだって言ってたな。 2週間もないって」
「あ、そうなの?」
「うん、そうだ。 電車でなんか、っていうか、みたいな感じで言ってたから忘れてた」
「…てことはあれじゃね?俗に言う、安全日じゃね?」
「安全日? 妊娠しやすいってこと?」
ちょいちょいそういうピュアさ唐突にぶっ込んでくるのやめてくれる?
妊娠しやすい日を危険日、しにくい日を安全日って呼ぶことがすげー… 俺馬鹿みたいに思えてきた。
いや実際バカな呼び名だな。 ちょっともう使うのやめよ。
「まぁ、どっちにせよそんなこと聞いて忘れられるほど、自信があんだな、今回は」
「んー、自信っていうか、今の時点でまぁ、クリアできるかなってことは前より多いよね」
「まぁな」
「でもやっぱちょっと気を抜くと……」
「…お?なになに?」
今の状況を手放したくないとか、まだこの状況を味わってたいとか思うのか?18歳らしいこと言うのか?
「…暴走しそうになる」
「はい?」
「男かな、女かな。とか」
「あー…そうでしたそうでした」
ナカ出ししたっていうその日のうちに、スケボー禁止令出すほどだったわ。
そんなそぶり微塵もみせねーくせに。
すっげー子ども欲しいっぽいんだよな研磨。
…なんか感慨深いわ。
いやでもまだ早いんじゃね?
もっとヤりたい放題……じゃなくて、親になる前にやりたいことやってもいいんじゃね?
ってそうもいかないかもしれないって状況だからなんだけどな。
まぁ、前回同様不安も心配も一切なし。
見守るほかねーな。