第9章 aims
ー黒尾sideー
別に普通、か。
さっき少しでも研磨に感じた不信感とか違和感。
全部見当違いなものだったけど、それを感じた自分が逆に恥ずかしいくらい、
真っ当ででも斬新なことを、なんでもないことのように言ってのける。
それから研磨はいざやることになったなら、
本当にそれでいくことになったなら、絶対やってのけるだろう。
アメリカで仕事を続けることとか、家族養うこととか、そういうの。
この調子で、淡々と、飄々と。 でも、意外と努力、して。
当の本人は努力と呼ばれることは煙たがるだけろうけども。
「なんか、アップデートが絶え間ないな、お前ら」
「そう? 別に…フツーだよ。 クロの料理は? アップデートされてる?」
「さぁ?いっつも美味いもん食ってる研磨がどう思うかは俺は知らん」
「それはそれ、これはこれ。 比較とかしないし」
「はいはい。 …でもまぁ、どっちみち集まりはしよーぜ。
妊娠してたなら残るにせよ渡米するにせよ、まだまぁ不安定な時期だろうけど…
っつーか不安定な時期じゃねーの? 渡米とかありなわけ?」
「…フアンテイナジキ?」
「おいおいおい… 妊娠までのことは調べててもその後のこと調べてないみたいな感じか研磨」
「…?」
「よく聞くだろ、安定期に入りましたのでご報告致します、云々かんぬん… 的な」
「よく聞く?」
「…聞かねーか。興味ないわな。 いやでも研磨、スケボーダメとか言ってたじゃん」
「……あれは別に根拠はないけど、流産とか聞くし。なんか、なんとなく」
「まじか、まぁ、穂波ちゃんはわかってるだろその辺。研磨よりは普段から触れてそうだし」
「じゃあやっぱり結局日本に残るってなるのかな、なんか穂波の予定ばっか変わるのおかしくない?」
いや、まぁ、それは… 仕方な… くはないのか?
そんなこと聞かれても俺もわかんねーわ…
研磨のこの、なんで?じゃねーけど、このモードは、時折現れるわけだけど。
こんなひねくれたやつなのに、
純粋な子供特有の疑問みたいな真っ直ぐさが備わってて、妙にぎくりとすんだよな。