第9章 aims
ー穂波sideー
それから二人でシャワーを浴びて。
研磨くんはささっと着替えてリビングへ行った。
株のことかな、と思ってたら少ししたらホテルの人が部屋にくる音がした。
わたしは寝室で、バスローブのまま傷口を少しでも乾かそうと思って。
今日の帰りは研磨くんが選んでくれたロンハーマンの生成りのリネンワンピースを着ようと思ってたから。
胸元は開いてないし、傷口擦れちゃうかな、とか汚しちゃうかなとか。
ソファに腰掛けて小説を読んでいると研磨くんがやってきた。
マーガレットハウエルで選んだ、セットアップじゃないけど上下同じカラーの服。
ダークブラウンの上下、黒いベルト、髪色は絶妙なツートーン、白い肌。
いつもの抜け感で、ほんと、かっこいい。
「穂波、これ。持ってきてくれた」
研磨くんがはいって渡してくれたのは傷パワーパッドの箱。
サイズが様々。合うものをどうぞってことらしい。
持ってきてくれたって… ありますか、って聞いてくれたのは研磨くんだよね、なんて思いながら受け取る。
『…ありがとう、研磨くん』
「…ん、おれはなにも」
『痕残っていいのに、な』
「ちょっとは残るんじゃない、結構エグいよそれ」
『…ふふ』
「普通の絆創膏も持ってきてくれたけど……大きいやつ」
『…そっち使おうかな』
「…ふ そんなにのこしたいの?」
『だって…』
こんなことって、よっぽどない。
こんな深い傷、よっぽどの、かなりの、S気質の人じゃないと、歯でつけることなんてできないと思う。
それにすごく気持ちよかったし。
しかもそれが… どうも… ほんとに悪魔の仕業だったのかもなんて思うと。
「おれは傷なくても忘れられないくらいだけど」
『なっ わたしもだよ。 覚えてたいからじゃないもん』
「…ん、知ってるけど。 じゃあなんで?」
『研磨くんの痕が残るって嬉しいなってそれだけ』
「おれだけどおれじゃないのに」
『…え、あ、研磨くんはそこに引っかかってるの?』
「………」
やだ… きゅんが…… きゅんがすごい……