第9章 aims
ー研磨sideー
『うん、ありがとう』
すっごい綺麗な顔で笑って穂波が言う。
『…本当に妊娠したら5月くらいかな。
ぎりぎりまだ夏休み前だけど、頑張り次第ではどうにかなるかもしれないし、
少し休むにしても単位を先に取っておくことはできるもんね』
「うん」
『シッターさんも充実してるし、早々大学復帰とかも体調次第ではできると思う』
「…ん」
『…今から2週間後に検査ができて。わたしはその数日後にフライトで飛ぶ』
「………」
『きっとすっごくバタバタするだろうけどそれも楽しそうって思う。
研磨くんとカリフォルニアで暮らすの、すごく楽しいだろうなって』
「…ん」
『でも、もし、赤ちゃんがやってきてくれたら、わたしはとりあえず、国立の家に、いたいな。
カズくんやカズくんのスポンサーさんには特に、迷惑をかけるけれどでも。
いろいろがそっちの方がゆっくり向き合えそうで… ってこれはエゴかな。
飛び込んでバタバタしながらも、できる限りのことをするべきかな…』
「大学はもう延期にするにしても、カズマ関係の仕事とアキくん関係の仕事はできたりするかもだし。
そんな、簡単なことじゃないだろうけど、その辺はきっと理解ありそうな人たちだし」
『………』
「だから、ほんと、おれは穂波を追いかける形になるだろうけどできるだけ早く渡米するし。
そっちの方向で進めるのも、全然。 できるし、するから。
って、結局さ、身体に変化があるのは穂波だから、本当の意味での日常ががらっと変わるのも穂波なわけだし…
おれはどっちにも合わせるし、どっちでもやってけるって思うから、穂波に決めろってわけじゃないけど…
んーと、優先はしたいなって思う …かな」
べらべら喋りすぎてるおれ。全然スマートじゃない。
でも、なんか色々考えると、早い決断が必要だし。
伝えれることは早いうちに伝えないとって思った。
『あーん、もう。 それはそれで楽しそうって、わくわくしてきちゃう。どうしよう』
穂波は一旦国立に残る、って言ったのに。
なんか逆におれの発言で決断を遅くしちゃってる感じあるけど……
選択肢を広げるってのは大事なことかなとか。