第3章 くじら
「…それって生まれ変わりじゃないんじゃないですか?」
『………』
確かに。
『あ、ほんとだ。生まれ変わりとは言わないのかも』
「確かに…」
『じゃあ、やっぱり生まれ変わったらね、研磨くんに会えたらなんでもいい。
で、それとは別で、死んだら鯨とか大自然の一部に還れたらいいなって思う!』
「………」
「お墓には入らないってこと?」
リエーフくんが鋭いことを。
『うん、入らなくていいなら入りたくないなー』
「…そっか、覚えとく」
『うん、覚えといてね』
「あ、でも」
『…ん?』
「おれより先に死なないでね」
…なんか、おじいちゃんとおばあちゃんになった気分。
いやでもね、死は別に老いてからのことじゃない。
『うん。…でも、研磨くんもわたしより先に死なないでね』
「んー… それはちょっと無理かも」
『えっ』
「でも、いっぱい一緒に過ごそう」
『うん。いっぱい一緒に過ごそうね』
ほわほわ。 ほわほわ。
「…なんか 老人っぽいっすね。2人」
『…笑』
「…笑」
「おい影山!研磨は熟年カップルって言われるの嫌いなんだぞ!」
「あ"!? んなこと言ってねーわボゲ!」
老人っぽいか… まだ、付き合って2年も経ってないんだけどな。
まだ高校生なんだけどな。
…でも別に、いやじゃないな。
そうこうしていたら練習再開の時間になって。
マネのみんなには練習に関わることをしてもらって、
わたしはゴミや食器の片付けをする。
はぁ…すもものいい香り。
お兄ちゃんがすもも大好きで、すもも指定で代金をくれて。
いつもの八百屋さんに頼んで持ってきてもらった。
こんなたくさんのすももの種、初めて見た。
いくつかの果樹農家さんに直接頼んでまとめて仕入れてくれた。
…ありがとうでいっぱい。
そう言ったら、それはこっちの方だよ。って八百屋さんが。
お兄ちゃんはお金を回すのがすきだ。
こうして、ローカルなところとかなんだろな、応援したいとこに。
わたしも、自分で稼ぐようになったら、考えて使いたいなって思う。
お買い物は投票に似てるなって思うから。