第9章 aims
『研磨く… あ……』
胸元の傷口を研磨くんの冷たい舌が舐めとると、
熱さと冷たさが相まってまた気持ち良くって小さく身体が跳ねた。
研磨くんは溢れたのを舐めとるだけじゃ足りない、と言わんばかりに
傷口にちぅぅと吸い付いて血を吸い始める。
「…ん?」
少し遅れてわたしの呼び声にレスポンスをくれながら、
身体を起こしてこちらをみてくるわけだけど。
口元には鮮やかな血がついていて、それを手の甲で拭って。
そして取れきれなかった血をぺろりと舐める。
その仕草だけで、
「きゅうううって。 締まった、今」
ナカにはいったままの研磨くんの尻尾をキュウと締め付けてしまう。
「穂波の血、おいしい」
『…ん え、』
研磨くんの瞳がぎーんって赤くなった。
いつもの琥珀色の瞳が、ルビーみたいな澄んだ赤。
最高級とされるそれのような、鮮やかな赤。
綺麗だな、この人ほんとに綺麗な人だな、って思う。
監禁とか拘束とか冗談で言ってたけど、全然されたい。
束縛されたい。縛られたい。
ふらふらとあっちこっちに行ってるわたしが何を言ってるんだって感じだけど、
時折こういうよくわかんない、所有され欲?みたいなのを確かに自分の中に感じる時がある。
「ダイジョーブ、そんなありきたりな閉じ込めかたなんかしないから」
『…え』
赤く色を変えたその瞳でわたしを見据えながら、
考えてることは全てお見通しと言わんばかりに小さく笑って
余裕たっぷりに、研磨くんはそう言った。
そして、心底ワクワクするってこどもみたいな表情で、
「そんなのつまんないじゃん。
もっと広く、もっとのびのびと。
でもおれしかだめ、おれしかいらない、ってなるように。
もうちゃあんと効いてきてるはずなんだけど、まぁ、じっくり経過を見ていけばいいよね」
そう付け足した。
色っぽい色っぽい悪魔な研磨くん。
悪魔でも人間でも、想像つかないけど天使でも。
身も心もすべて、捧げたい。
心底そう、思った。