第9章 aims
「…2人、グレードアップしたね」
福永がぼそっと言う。
『グレードアップ?』
「うん」
福永はそれ以上言わない。
着てるもののことかな、よくわかんないけど。
『福永くんの毎日はどんな?』
「うん、楽しい」
『うん、うん!』
福永が楽しいと言ったことが心底嬉しい、といった具合で穂波が相槌を打つ。
こういうとこ見てるのほんと好き。
それからお笑いの方のこととか。
あとはやっぱ福永が作ってくれた靴箱と、
キッチンカウンターみたいな作業台みたいなののこととか。
食べ物のこととか、色々話しながら福永の休憩時間はあっという間に終わった。
『福永くん、おすすめのデザートはありますか?』
「ん、なんでもいい?」
『うん!なんでもいい! 研磨くんはいい?』
「ん? うん、いいよ」
「…わかった 用意するね」
福永は器用だから、とんとんと調理場も任されるようになって。
デザート、サラダ系はもちろん、揚げ物とか。
あとは仕込みで煮込み系とかもやってるらしい。
そんな話をしたからかなのか知らないけど穂波は福永にお任せでデザートを頼んだ。
『研磨くん研磨くん』
「…?」
『お店に好きな人がいる、会いたい人がいるって、本当にすごいことだよねぇ』
「………」
『いつもいつも思う。今、すっごい思ってる。
お家とはまた違って。行けば会えて。飲食店なら少し休んで。そして応援もできる』
「…ん」
『今日、連れてきてくれてありがとう』
「ん」
おれは、家に穂波がいるってのが、馬鹿みたいに嬉しいんだけど、毎日。
大学から帰るといて、いなくても、帰ってきて。
布団では毎日一緒に寝る時間があって。
でもまぁ穂波の今話してることとはちょっと、違うから。
言わないでおく。