第9章 aims
──「わ、いいじゃん。 福永ってほんと器用だよね」
4月のある週末の午前中、福永くんがうちに来て、
そして靴箱の設計図?を見せてくれた。
研磨くんが言う、器用って言うのは、
その設計図がすごく綺麗に描かれているのを見て言ったんだと思う。
ラフなのに、綺麗で。
研磨くんにメールで聞いていたんだろう、寸法ももう書かれていた。
木材は小屋のとこのサンルーム的なとこにもう、用意がしてあって。
少しお金を出せばプレカットだってお願いできるのに、
福永くんはそれもやってみたい、とのことだったらしく、
売られていたままの状態でうちにやってきた。
家に置くものを作ってもらうその際の「やってみたい」をすんなりオーケーしたところ辺りに、
研磨くんが福永くんに寄せてる信頼をひしひしと感じてきゅんとした。
研磨くんはサンルームに置いてるいただきものの古いカウチで猫のように寛ぎながら、
そしてわくわくした顔で福永くんが作業するのを眺めてた。
もちろん手にはゲームを持って、ゲームしたりしなかったりという具合で。
わたしはレッスンへ行く前に昼食の作り置きをして過ごした。
この家に暮らし始めてから、置き弁にハマっているのだ。
大学にはお弁当は要らないって言うけど、
土曜日のお昼はわたしレッスンで大体研磨くんは家にいて。
研磨くんも普通に食べるって言ってくれるし、自分の分と2人分、作り出したらハマった。
って言ってもまだ福永くんが来てくれた日は、4回目くらいではあったけど。
13時半ごろに家に帰ってくると、
研磨くんはもう食べ終えて洗い物も済ませてあることもあれば、
まだ食べてないから一緒に食べよって言うこともある。
ダイニングで食べたり、縁側で食べたりする。
どちらでも、どこでも、嬉しくって。
ほんと、研磨くんとの時間は全てが幸せに満ちている。