第9章 aims
・
・
・
「…予約してる孤爪です」
うっ…
別にいつもと何も変わらないのに。
いつもと何も変わらないからこそ?いつも聞くことのなかった言葉に、胸が…
「あぁ、福永くんの。お待ちしてました。どうぞ〜」
おしゃれなお店。
アングラっていうかサブカルっていうか。
多趣味なそうな人たちが数人、ゆったりと無駄すらも楽しむように立ち働いてる。
福永くんは調理場のはじの方にいる。
まだバイト始めて数ヶ月だしお皿洗いもやりつつな感じかな。
ひょこって福永くんがこっちを見て。
小さく手を振ると小さく返してくれた。
「……見たことない名前ばっか」
『これ美味しそう♡』
「ほんとだ」
『これ気になる……』
「…笑 トルコとかその辺ばっか」
世界各国の料理名物が並んでいるというのに、
わたしが指差したどれもがトルコ料理ないし中近東のお料理だったみたいで、
研磨くんがふって笑った。
「フムスは今度作って。おれもあれすき」
『うん、わかった。作るね』
作れるからって外で食べないわけじゃない、
むしろ自分じゃない味が食べたいってなるわけだけど。
研磨くんに今度作って、って言われると、
今度食べようってなるんだから不思議だ。
ブイヤベース。
ロソッリっていうフィンランドのサラダ。主食みたいなサラダ。
白キクラゲときゅうりの酢の物、豚肉とミントのサラダ。
ミディエ・ドルマってムール貝にバターライスを詰めたトルコの料理。
いろいろ色々食べたいけど、わたし達2人だし、とりあえずこのくらい。
福永くんは引っ越しの後、あれから2回うちに来てくれた。
どちらも、研磨くんからの誘いで。