第9章 aims
──「…ん、なんか石も入れたいなとかも思うんだけど」
『石?』
「天然石…?ずっと、穂波に似合うだろうなって思ってる石がある」
『そうなんだ… なんか、嬉しい』
「ん…でも、要らない気もして。 まぁいいや。 似合ってる。 すき」
プレゼントを開けて、手首につけたあとそんな話になった。
その時はもう、2つの大会に出て優勝してて、
きっと去年までとはお財布状況は違っただろうけど。
だからって劇的に何かを変えるわけじゃない研磨くんが心から好きだと思った。
今まで通りの感じが、そんなのがあることが… たまらなく贅沢だと思った。
今日はこんな風なお買い物をしてみてるけど。
お買い物どころじゃなくて、これからまたあのホテルに帰るわけだけど。
これはボーナスステージというか… ううん違うな…
わたし達にとってのボーナスステージはきっとこうじゃない…
これはどっちかっていうと冒険ステージかな…?
よくわからないけど…
とにかく、今日のバブリーな感じはイレギュラーなものであって、
だからこそ、とにかく割り切って楽しむことに徹している。
とはいえ… とは、いえ?
昼食は2人で千円くらいだったし、
最初こそボッテガから始まったけど…
そんな目ん玉飛び出る額のものは選んでないけど…
あの部屋に2泊するだけで相当な額なはず。
昨日の夜から今まででざっと…
「…ふ、計算とかしないでね。それに、そんなすんごい高いのとか買ってないよ」
『………』
「大学生のくくりだと、まぁ贅沢な買い物はしてるかもだけど」
『…うん、楽しいね』
「うん、それを楽しむ日だからいいの」
うん、そうだ。
そう、いいの。
いいんだ。
ありがたく受け取って、ありがたく楽しめばいいんだ。