第9章 aims
「うん、それも。かわいい。 買いたいんだけど買ってもいい?」
フィッティングルームから出て、またくるりと回って。
研磨くんと目が合うと、そんな言葉をさらっと零す。
『嬉しい。ありがとう。わたしもこれ、すき。さっきのもどっちもすき』
「…ん、おれも」
『…ん、じゃあ着替えてくる』
「…ん」
リネン地の生成りのワンピースで。
フレンチスリーブっていうのかな、でもフレアになってて。
それから背中が開いてる。パックリではなくて、布で分けられて2段階に分かれてっていうか。
カジュアルにも上品にも合わせ方次第でいけそうな、万能選手感。
背中の空いたワンピースは白と黒、薄いコットンのを持ってるけど、
あれはもっと全体的にゆとりがあるしカジュアルな印象。
これはまた、違った印象があって… うん、嬉しい。
そんなにたくさんの服を持ってないから、いっぱい着回してるし、
だからきっと研磨くんはわたしが持ってない感じを選んでくれてる。
そういうのがまた… 嬉しい。
首にも耳にもそれから手首にも…
研磨くんが選んでくれた朔さんのアクセサリーがあって。
ワンピースまで研磨くんが選んでくれたんのを着ちゃったら、それはなんだかまるで、
研磨くんのですって全身で表してるみたい。
わたし達しかわからないけど。 そんなことしなくてもわたしは研磨くんのだけど。
でも、そんな感じだ。
そう、左手首には細ーいチェーンのブレスレットがある。
18歳の誕生日にやってきてくれた。
16歳の時がネックレスで、17歳の時がピアス…ってわけで、
わたしはそう、とにかくそう。 むふふなのである。
全部同じ作家さん… 朔さんの作ったもので、素材も空気感も線の細さも統一されてて。
ずっとつけてられる。どんな服を着るときも、どこにいく時も。