第9章 aims
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やばい。 良いのがあるといい、どころじゃない。
ワンピースどころか、デニムもトップスもサンダルも穂波に試着させたいのばっか。
馬鹿になる、おれ、馬鹿になりそう。
バブリーに、とかってちょっとふざけてみてるけど。
さすがに今おれ、自分にそれを許したら、ほんと馬鹿なことしちゃいそう。
…今はワンピースだけってワンピースだけ見て、一枚だけ選ぶ。
「穂波これ着てきて」
黒いハリのあるコットンのワンピース。
袖にボリュームがあって、レースが施されてる。
ネックラインは深めのVで。
合わせ方次第でいろんな時に着れそう。
水着にさっと羽織るのも、よくわかんないけどちょっとしたパーティーとか?外食とか。
よくわかんないけどアメリカのイメージのいろんなシーンで。
それから、絶対に似合う。
『これ、かわいいねぇ。レースが綺麗だねぇ』
「ん」
穂波が出てくるまで待ってるのも変な感じだけど、
扉を開けてひょこって顔が覗くとこが見たい。
だからここで待ってる。
『…あ、研磨くんいたぁ』
「…ん」
ほら、おれがいるの確認して、扉をしっかりと開ける。
おれの前まできて、それから今度はゆっくりとくるくる回る。
ただ回ってるだけでも、踊ってるみたい。綺麗。
「うん、綺麗。あれもこれも着せたいけど、とりあえず… 欲張らないでおく。
これにする。 穂波、すっごいかわいい」
「やだ… そんな感じなんですか、彼氏さん」
『ううう… そうなんです そんな感じなんですぅぅ……』
ここの店の人とはなんかまぁ雰囲気も似てるしすぐに打ち解けたみたいで
よくわかんないけど胸を押さえる仕草をしながらおれのこと話してるっぽい。
『…研磨くんありがとう。 ちょっと、脱いでくるね』
「…あ、んーと このまま着て帰れないの?
あ、でもシャワー浴びてからにしよっか。なんでもない…」
なんかごにょごにょしてしまった。ダサい。
ダサいから、ちょっとまた店内を見てみることにする。