第9章 aims
ー研磨sideー
穂波はもう心が決まってたという感じで。
すんなりと黒いボトムスを手に取って、おれに渡して。
試着したのをみると、うっとりした顔で、うん、これ。 って言った。
これ、履きやすい。ストレスフリーだ。
こんなブランドあるの初めて知った。
穂波にもスカートとかワンピースいいかなって思ったけど、
なんか今日はしっくりこなかったからやめた。
それで同じフロア歩いてたら、生地の感じかな、色味かな。
店の雰囲気かな、穂波っぽいなって思うとこがあってここいい?って聞いたら穂波は、
『あぁ〜〜〜………』
って嬉しいのか悔しいのかよくわかんない表情と声で反応した。
マーガレットハウエル。
すごい、いい店だと思う。
でもおれ、穂波にワンピース買いたかったんだけど、
なんだろ、ここのはゆったりしてるのばっかで。
それはそれでいいんだけど、ちょっと違った。
かわいいし似合うんだけど、なんだろ… 身体の線、もうすこし見たい。
それか身体の線が見えなくてももうちょっと肌が見たい。
背中とか…鎖骨とか…
でもここのリネンパンツとトップスとか、普通にかわいいだろうな。
着せてみようかな、でもな… ワンピース探したいな…
ていうか、
「穂波さっきから何考えてるの?」
『研磨くんに選んでもらった服を試着する幸せを噛み締めてる』
「…ん 笑 それは、伝わってくる。かわいい。 でもそれだけじゃないでしょ?」
『…ん、あーここもあったかぁ。ってなったの。研磨くん絶対似合う。ああああっって』
「ここメンズもあるの?」
ユニセックスな感じはあるのに、レディースしかなくて、へぇって思ってた。
『うん、上のフロアにあるって』
「選んでくれるの?」
『え!いいの?』
「うん、おれここ好きかも」
『じゃあ、選ぶ。選びたい。選ばせてください』
「…笑」
今までこんな風に一緒に買い物したことなかったし。
なんかおもしろいかなって思って提案したこの、今日の過ごし方を、
穂波が想像以上に楽しんでくれてて、その表情を見てるだけで嬉しくなる。