第9章 aims
マルジェラではスモーキーなカーキのオーバーサイズTシャツを。
あくまでもカジュアルで着心地が良くって、研磨くんらしいのにしたい。
同じお店でボトムスも揃えれたら楽なんだけどしっくりこなかった。
それに別に、グラミチのハーパンのままでいいじゃないとも思う。
「穂波は欲しくない?」
『ん?』
「とりあえずで買う感じじゃないからでも…おれはせっかくだし買いたい。
だってこのままだと明日も同じ服だよ?」
『んと』
「ごめん、さらっと買って渡せばいいんだけど… サイズとか大事だし…」
『んとね、研磨くんが選んでくれるなら欲しい』
「え、おれ?」
『うん』
「…ん、わかった。でもおれ何も知らない……」
『それがきっとまたおもしろいかも?』
歩く量とか考えることが増えて疲れはするけど…
明日の正午までホテル暮らしだ。
そんなのも、良いんじゃないの?っていう流れだよね。
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松屋銀座へ移動して、ランチをしようと思ったけど2人ともしっくりこなくて。
地下でフレッシュフルーツジュースを買って
研磨くんはパン屋さんでアップルパイを買って、ベンチでパクパク。
ボッテガとマルジェラのショッパーを持って、
デパ地下のベンチでジュースとアップルパイを食べるわたしたち……
「…ふ 笑」
『…んふ』
自分なりに楽しむことはできるけど、
染まることも背伸びすることも無理をすることも
そして、妥協することもできないわたしたちは。
バブリーな1日の真ん中を、こんな風に過ごす。
わたし達はきっと、ずっと、こんな感じ。
これがもし切り詰めての選択だとしても。
それはそれできっと、楽しめているはず。
楽しめてはいないとしても、絶対に味わえてはいるはず。
ホテルで入れてきた水を水筒から飲んで、口をすっきりさせて。
4階へ。 お目当てはイッセイミヤケ。
カジュアルなオーバサイズのTシャツにプリーツプリーズの黒いパンツとか。
絶対に絶対に。 研磨くんに似合う。
着心地も、良いらしいし……