第9章 aims
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ゆっくりまったり、食事をいただいて。
しばらくぼけっと過ごして。
9時になったら研磨くんはiPhoneとiPadでチャートをチェック。
1時間ほどして、今日はもういいやって、支度を始めた。
「穂波、下着洗ってくれたの」
『あ、うん。すっごい簡単にだよ』
「洗濯機より手洗いの方がずっと綺麗な気がする。ありがと。
どうやって乾かしたの… あ、ドライヤーか」
『うん、ごめんうるさかった?』
「ううん、全然。 そっかこれくらいならドライヤーで乾くんだ。
いやでも、結構長い時間ぶーんってやってたよね」
『…笑 うん』
「ありがと」
『いえいえ、どういたしまして』
研磨くんの思考があまりに建設的で。
そのうち、こういう家事みたいなことを時給換算し始めないかという考えがよぎってたまにヒヤっとする。
でもそんな会話の中に、ぶーんってやってた とかいう擬音語が入ってきたりして。
それが、かわいくって癒される。
「…なんだっけ、アキくんのスポンサー」
『ん?』
「服のメーカー」
『ボッテガ?』
「あぁ、それ。 銀座にあるかな」
『あると思うよ』
「行こっか、こんな格好で入れるかな」
合宿に顔見せに行くって目的の外出だったから。
割合ラフな格好してる。
研磨くんはグラミチの墨色ハーパン、高1の時ハワイのお土産に渡した赤茶色のTシャツ、
テバの黒いベルトサンダル、お兄ちゃんのがあげたビラボンの黒いキャップ。
ラフだけど全然、っていうか…
『かっこいいし、そもそもこのホテルに来れてるから大丈夫って思っちゃう』
「…ふ、確かに。穂波も全然、いつも綺麗だよ」
『きっ…』
「…ふ」
そうやって不意に織り交ぜてくるストレートな言葉。
嘘じゃないのがわかるから、反応を見て楽しんでいるのがわかってもそれでも。
嬉しいし、恥ずかしくなる。