第9章 aims
ー穂波sideー
『わぁ…』
ダイニングテーブルではなくリビングのテーブルにお料理が並べられていて。
「窓からの風景をご覧になりながらお食事されてはいかがかと思い、
僭越ならがこちらにセットさせていただきました。
お楽しみいただけたら幸甚に存じます」
って、部屋を出る前にそう、言ってた。
「穂波、窓の外、子供みたいに見てたもんね」
『そ… それでそんな配慮を?』
「…多分一回寝室の方に来たけど、やめたっぽかった」
『…すごいな、なんか。チップ渡せたらいいのにね』
「…ん、わからなくもない」
2人とも和食の朝食を頼んだ。
洋食と違って和食はメニューが決まっていて。
選ぶのはご飯かお粥か、緑茶か焙じ茶か、だけ。
炙りダコとオクラの胡麻和え、胡瓜と唐黍の酢の物、
だし巻き玉子と大根おろし、鯵の塩焼き、冬瓜と鶏ひき肉の煮物、
茄子と茗荷のお味噌汁、ザーサイとネギの乗った冷奴、お漬物盛り合わせ、梅干し。
ご飯は土鍋から、自分でよそう。
お茶は2人とも焙じ茶。
フレッシュフルーツはいろんな種類の果物が少しずつ。
昨日の夜からいっぱい動いたから、わたしたち、おなかぺこぺこ。
いただきますをして。
ゆっくりと、じっくりと食事を楽しむ。
食事に至っても、美味しい、素材だとか器の質は一流なんだろうけど。
でも、なんだろ、親しみやすい組み合わせ。
背伸びしなくても楽しめる献立で。
そこがまた、すごくいいなって思った。
「柴漬けうま」
『うん、美味しいねぇ』
「穂波、柴漬け作れるの?」
『…作ったことないや。でも作れるはずだよ、家で普通に、家庭的に。今度作ってみるね』
「…ん、食べたい」
『うん、嬉しい』
「梅干しは一年分ある?」
『ん?』
「………」
『あ、梅干しは一年分どころじゃないよ。4年分くらいある 笑』
「…4年」
『…ん』
毎日、研磨くんがもし食べたとしても。
4年分くらいはある。
いっぱいいっぱい漬けた。土用干しがなかなか大変だったけど、でもいつだって楽しい。
それに今年は… うん、毎年だけど今年はまた違った楽しさがあったなぁ