第3章 くじら
ー穂波sideー
なんだか変な空気のまま、食器洗いモード。
今回は夕方抜けないから、今仕込みすることはもうほとんどない。
けどのんちゃんに任せてるアジフライの続きを私もしよう。
『それじゃあ、食器お願いします』
「あのっ… 穂波さんって… 月島先輩とその…」
梟谷の子からの質問というか、話題というか。
『…んーと、すごく仲のいい… 友達?かな』
「ですよねっ 孤爪先輩とお付き合いされてるのって…」
『うん、わたし。 …あ、研磨くん』
人のいなくなった入り口に研磨くんがいつの間にかいた。
「まだ時間あるからやっぱこっち来た。いい?」
『うん。もちろん。わたしのんちゃんとこ行くつもりだったから、よければそっちの方に座って?』
「…ん。 あ、月島に穂波のこと調理室に置いてきちゃったけど、
思いの外いろいろ面倒かもしれないから行ってあげてって言われたけど。どう?」
『ん?わたしは全然、面倒なことなんてないよ』
「…ん、ならよかった。 じゃあおれあっち座ってる」
のんちゃんの作業してるとこの隣の台の端っこの椅子を取り出して、
研磨くんは腰掛ける。
『驚かせちゃってごめんね、んーと、わたしの恋人は研磨くんです、ってことが伝わればいっか。
じゃあ、洗い物お願いします!』
何か説明がいるのかな、
例えば蛍くんと二人で一泊二日でスノボに行ったこともあるけど
それはもちろん研磨くんに了承得てるよ、とか。
…え、それって必要?
とか思って、結局伝えることはそんなになかった。
のんちゃんのところに行って、
いっぱいやってくれてありがとう〜って言って。
お話ししながら一緒に衣をつけていく。
研磨くんはなにを話すでもないけど、そこにいて。
それはやっぱり不思議なほどにそれだけのことが、心地いい。