第9章 aims
ー穂波sideー
研磨くんにイかせて?って言われて。
キュってした。
いっぱい気持ちよくなって欲しい。
そう心から思いながらも、
わたしも欲しい、研磨くんが欲しい。
それが止まらなくって。
好き勝手にうごいてしまってる、なんてことだ…わたしってばほんと…
はっとして、動きを止めると
「…いいのに、そのままで。 気持ちいいから、そのまま、好きに動いて」
『…ん いいの?』
「いいの、すきにして、もっと乱れて」
そこからはただただ、快感の波に乗って流され飲み込まれ…の繰り返し。
何をしていたかは正直記憶にない。
覚えてるのは研磨くんが頬に手を伸ばして。
手繰り寄せられるように顔を近づけて、キスをして。
キスをしながらなんの言葉も交わすことなく2人同時に達したこと。
ただそれだけ。
それからベッドの上で少しゴロゴロして。
ぬるーいお風呂にでも入ろっかって。
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「あ、思ったより小さい」
『ね、わたしも思った。でも、どうせ研磨くんとくっつくし。ちょうどいい』
「うん」
部屋の大きさから想像するよりバスタブがかわいらしいサイズで。
でもそれがまた、品があっていい。なんだろな、うまく言えないけど。
そして、桶と風呂椅子がどうにも美しい工芸品で、目を奪われる。
「…綺麗だね。普通なのに、普通じゃないのがわかる」
『ね、工芸品のすごいとこってそこだよね。捻りがあるわけじゃないのに。
作り手の技量や素材の違いが一目でわかっちゃう。
すごくないのはわかんないんだけど… すごいのは、わかるっていうか……』
「…ん、なんかいいね、ここ。 なんていうか、行きすぎてなくて。
大事にしてるとこが、ちょっと、理解できる感じ」
『うん、それわたしもわかるかも』
きらびやかさではないものが、ある。
柔軟性も感じるし、一貫した芯みたいなものも感じる。
素敵なホテルだな、と思う。