第9章 aims
ー穂波sideー
あれから何度も、じゃなくて。
3度目は、これでもかってくらいたっぷりと、じっくりと。
重なり合った。
もともとじっくりすることが多いのに。
それ以上にじっくりと、なんか… 永遠を確かめ合うみたいに。
今は研磨くんの腕枕でごろごろ、うとうとしながら、窓の外を見てる。
もう、流石に多くの電気は消えていて。夜景、とは言えないけど、ぼんやりと夜空を。
ぽつぽつとしたそれでも明るい、東京の夜を、ぼんやりと。遠目に。
「ねぇ、穂波」
『んー?』
「明日の予定変更しよっか」
『…? あ、そっか。 うん。 ん?』
明日は福永くんのバイト先へ夕飯を食べに行く予定だった。
花ちゃんはパートナーの故郷であるハワイへ行っていてレッスンも休講で。
だから、家で普通に過ごして、夜、出かける。
夜、出かけるってことがわたしたちには珍しいから、ちょっとした目標じゃないけど。
目標みたいな。 なんて言うのかな、外食するってだけなんだけど、
でも、それだけじゃないイベント的な要素を感じてた。
それを変更する、ことはないと思う。
だって予約してるし、そんな自分都合でキャンセルしないし、そもそも、予定は夜だ。
家で普通に過ごすってことは、明日の朝をここで迎える時点でちょっと変わってくるにしても
一度家に帰ってからゆっくり過ごす時間はたっぷりあるし…
『…んーと?』
「電話で今日明日が空いてるって言ってた」
『へぇ… ん?』
「福永のとこ行くまで、ゆっくりして。 福永のとこからまたここ帰ってきて。
それで、明日も泊まろ …あ、明日の朝までにここ、予約入ってなければ」
『…ん?』
「なんか…おもしろいかなって… 日常があるからこその、アソビっていうか」
『……』
「まだそんな、臨時収入が続けて入った程度で浮かれてる場合じゃないけど…
ていうか浮かれてるわけじゃないんだけど …んーと、まぁ、どうかなって…思っただけ」
いいの?高いのに、とか。
いいの?研磨くんばかり、とか。
多分、要らない。
そういうんじゃ、ない。
今言うそれはきっと、興醒めする、それだ。
だって、わたしが本音でそんなこと思ってないから。
だから。